2026.06.13
『とんがり帽子のアトリエ』×『本好きの下剋上』コラボ
白浜鴎先生 × 香月美夜先生 原作者対談インタビュー到着
白浜鴎先生 × 香月美夜先生 原作者対談インタビュー到着
2026年春アニメとしてファンをにぎわせている『とんがり帽子のアトリエ』と『本好きの下剋上 領主の養女』のコラボを記念し、原作者同士の対談が実現!
『とんがり帽子のアトリエ』の白浜鴎先生と、『本好きの下剋上』の香月美夜先生は、かねてよりお互いのファンだと公言し、SNSなどでも交流されています。
そんなふたりのリスペクトあふれる対談をお届けいたします。(収録時期:2026年5月中旬)
プライベートでも交流のあるふたり
――おふたりはSNS上でお互いの作品をお好きだと公言されています。まずは白浜先生と香月先生の、お互いの印象から教えてください。
香月 白浜先生と初めてお会いしたのは、たしかOVAのブックレットに掲載する対談をすることになり、お話する機会をいただいたときでしたね(※「本好きの下剋上 第五部 女神の化身Ⅰ」限定版に同梱されたOVAブックレット掲載の対談)。
白浜 そうです。あのときは私がSNSで『本好きの下剋上』が大好きだとつぶやいていたら、香月先生から反応をいただき、それがきっかけで対談させていただくことになったんです。
香月 私も白浜さんとお話したいと思ったから、こちらこそ対談できてうれしかったですよ。初めてお話したときは、「なんて言語化が上手な方なんだ」と思っていました。私がどう答えればいいかと黙り込んだときにパパっと言葉を出してもらい、助けてもらったこともあって。絵がとても上手なのはもちろん知っていましたけど、それだけでなく言葉選びが本当に上手な方だという印象でしたね。
白浜 小説家の先生にそういっていただけるのはうれしいです。でもあのときは、憧れの香月先生を前に私もけっこう緊張していたんですよ。香月先生はすごく精緻な世界観のお話を描かれる方ですから、お会いする前はいかにも「作家先生」みたいな堅いイメージを想像していたんですよね。実際にお話してみるとすごく親しみやすくて、「香月先生も私と同じ世界に暮らす人間だったんだ」と思ったのを覚えています。
香月 それはお互いさまですよ。私も白浜さんの描くマンガを最初に読んだときに、「とんでもない作家さんだ」と思っていましたから(笑)。
白浜 それから香月先生とはたまに、プライベートでも一緒にお食事とか行くようになりまして。最近お会いしたのは、3月に開催されたアニメの先行上映会でした(※2026年3月15日開催の『TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」世界最速!先行上映イベント』)。
香月 先行上映会のチケットがたまたま取れたから、前日に白浜さんへ「行くよ」って連絡したんです。そうしたら「ロビーに行くのでご挨拶させてください」って返事が来まして。私はうれしいけど、原作者さんが出てきちゃって大丈夫? と心配しました。
白浜 結局そのときは香月先生を関係者席のほうへお呼びして、ご挨拶させていただいたんです。バタバタしちゃいましたけど、アニメの方も楽しんでもらっていたようでうれしかったですね。
――昨年10月には、SNS上で香月先生が両作品のコラボショートストーリーを発表し、白浜先生が挿絵を描くという試みをされていましたね。あれはどのような経緯で、実施することになったのでしょうか?
香月 SNS上でのノリ? 白浜さんがフェルディナンドのネタをくれるなら対価として絵を描く?と言ったので、本当に短編を書いて対価をもらいますからね……みたいな流れです。じつは以前対談したときに何かコラボ的なことができないかと、ショートストーリーのネタを考えたんですけど、当時はまだ書籍が完結しておらず、書籍で追ってくださっている読者の皆さんにはネタバレになる時間軸のお話になったのでお蔵入りにしていたんです。ちょうどよかったので、そのネタを仕上げました。お互いの魔法の設定を壊さないように書くのが難しかったですけど、すごく楽しかったです。
白浜 私も楽しかったです! 以前にもお仕事でローゼマインちゃんを描かせていただくことは何度かありましたが、成長した彼女は描いたことがなかったので、いい経験をさせていただきました。あれは発表する前に香月先生とDMで何度かやり取りして、「違和感ないですか?」って監修いただいたんです。
香月 白浜先生もお忙しいのに、あんなお遊びに付き合っていただいて私も楽しかったです! ファンの皆さんにも喜んでいただいて、いいコラボになりましたね。
アニメならではの演出に感動!
――アニメ『とんがり帽子のアトリエ』と『本好きの下剋上 領主の養女』は、2026年春アニメとして同時期に放送されています。最初に知ったときは、どのように思いましたか?
香月 まさに奇跡ですよね。同時期に放送されたおかげでこうしてまた白浜さんと素敵なコラボの機会をいただいたので、うれしく思っています。
白浜 私も一緒に盛り上がることができてうれしく思っています。母がアニメ大好きで、『本好きの下剋上』もずっと見ているので、『とんがり帽子のアトリエ』と両方追いかけるのが大変だと言っていましたが(笑)。
香月 同時期に放送されているアニメはライバルみたいにとらえている方もいらっしゃると思うんですけど、私は原作者として一歩引いた立場からアニメを見させていただいているので、『とんがり帽子のアトリエ』も同時期にやっているのが素直にうれしいんですよね。
白浜 週の楽しみがたくさんあってうれしいって気持ちですよね。両方ともリアルタイムで追いかけています!
――(対談実施時点では)両作品ともまだ放送途中になりますが、ここまでお互いの作品のアニメをご覧になっての感想を教えてください。
白浜 『領主の養女』は貴族のキャラクターが多いので、これまでよりもキャラクターたちのお洋服とかが華やかになり、見ていて楽しいです。あとフェルディナンド様は相変わらず最高ですね! ローゼマインの妄想のなかでアイドルみたいにさせられちゃうとか、フェルディナンド様の面白い一面がたくさん見られてファンとしてはうれしいです。
香月 たしかにあんなフェルディナンドは原作では出てこないですから、楽しいですよね。
白浜 ローゼマインの決意とか、これまでアニメで積み重ねてきたものがしっかり表現されていて、それも素敵だと思いながら見ています。とくにED映像は、原作を最後まで読んだ私としてはあまりにもエモくてうるっとしてしまいました。本当に素敵なアニメだと思います。
香月 私はアニメ『とんがり帽子のアトリエ』の絵本みたいな表現が大好きです。白浜さんのイラストをそのまんまアニメに落とし込んだような演出がお見事で、「この数秒間のシーンにどれだけのこだわりが詰め込まれているんだろう」と、ただ驚くばかりでした。あれって「ハッチング」って言うんでしたっけ?
白浜 そうですね。アニメーターさんが私の画風を再現して描いてくださっているんですけど、私も見たときに驚きました。
香月 あと魔法陣とか描くときに動きが、ものすごくキレイなんですよね。ちょっとした準備の動きとかもごまかさずにすべて描かれていて。あの動きをアニメにするのは大変だと思いますので、アニメーターさんたちの努力に感心するばかりです。
白浜 わかります。アニメーターさんたちの技術は、本当にすごいですよね。
――アニメになったことで、より印象に残ったキャラクターやストーリーは?
香月 私はアガットが、マンガで読んでいたよりも刺さるキャラクターになりました。アニメで声や動きがついたことで、彼女の不器用なまじめさがより引き立った気がします。ちなみにうちの旦那は、リチェがお気に入りだそうです。一緒にアニメ見ながら「リチェかわいい」っていつも言っています(笑)。
白浜 私は第一章で、ローゼマインが家族の作った髪飾りを見て泣いてしまったシーンがすごく印象に残っているんです。中身は子どもじゃないのはわかっているのに、あのシーンはちゃんと年相応の「マインちゃん」に戻っていたのがとても素敵でした。演じられている井口裕香さんの演技もすばらしくて、忘れられないシーンになりましたね。あとローゼマインが神殿長になったことで、神殿のディティールが描かれるようになったのは、ファンとしてうれしいポイントです。これまで小説を読みながら想像で補っていたところがビジュアル化されたおかげで「祭壇ってこうなっていたんだ」とかうれしい発見がありますね。
香月 たしかにローゼマインが神殿長になってから、神事とかをちゃんと描くようになったので、私もアニメ化を楽しみにしていた部分でしたね。
白浜 香月先生の書く祝詞の文章がすごくかっこいいので、あれを読んでいるところを聞けるのもうれしいです。
香月 ありがとうございます。ちなみにあの祝詞、「神様の名前で噛みやすい」と声優さんたちから評判です(笑)。
原作者としてのアニメへの関わり方
――次はおふたりが、アニメ制作へどのように関わったのかお聞きしていきます。原作者のアニメ制作への関わり方は人それぞれだと思いますが、おふたりはいかがでしたか?
白浜 私は準備段階から、アニメ会社さんと密に連絡を取らせていただきました。お話とかは監督や脚本家の方にお任せしていましたけど、ビジュアル面については私自身が確認しなければならないことが多くて。とくに魔法陣についての監修の依頼が多かったですね。「こういう効果の魔法陣を描きたいのですが、これで合っていますか?」というスタッフさんの質問に、「この魔法陣だとダメなのでこれを足してください」みたいな指示を出すのは、まるで魔法学校の先生になったような気分でした(笑)。
香月 たしかに普通の日常では絶対にしない会話ですね。でも白浜さんは、ビジュアル面についてはこだわり強くて細かくチェックされている印象がありますよ。
白浜 本当にじっくりと見させていただいたのは最初だけでしたね。スタッフさんの上げてくださるものがいずれもすばらしかったので、制作の後半は確認のご依頼をいただいてもほとんどそのまま戻していました。
香月 白浜さんは絵を描けるから、ビジュアルの質問をされたときにも明確なイメージを返すことができるじゃないですか。それがすごくうらやましいですよ。私はアニメの初めからずっと制作過程のほとんどを自分で見ているんですけど、メインじゃないキャラクターの外見やちょっとしたプロップとかの説明を求められたとき、スタッフさんへイメージを共有するのが難しくて。「私が絵を描けたら説明が早いのに」と思うことはいっぱいあります。
白浜 香月先生は、シナリオとかもすべて監修されているんですか?
香月 そうですね。アニメだと尺の都合で、原作からエピソードを削らざるを得ないこともあるのですが、エピソードを削った結果後々に影響が出ることもありますので、確認をしなければなりません。シナリオだけでなく絵コンテのチェックも大事で、とくにコミカライズとかでビジュアル化されていない部分のキャラクターの動きとかは、一度イメージと違うものが世に出てしまうとその後の修正がきかなくなります。だから絵コンテのチェックは、毎回すごく緊張していますね。あとこの作品は背景にちょっと写っているキャラクターがじつは後々の重要人物、みたいな見せ方もしているので、初めて登場するキャラクターの作画とかも見せていただいているんです。
白浜 なるほど。『本好きの下剋上』のアニメはすごく原作の解像度が高いと思っていたんですけど、香月先生がそこまで細かく見ていらっしゃるからだったんですね。
香月 もちろんすべて原作どおりにならず、削ってしまったシーンの整合性を取るため、アニメオリジナルの描写を入れることもあります。そういうのは仕方ないですし、基本的には「楽しいアニメになればいいな」と思いながら監修していますね。あの話をちゃんとアニメの尺に収められるよう、苦心してくださっているスタッフさんはすごいと思いますよ。
――アフレコ現場をご覧になっていて、印象的だったことは?
香月 アフレコの立ち会いは、最近はリモートが多いですけど一応全話参加しています。最近はキャストさんたちの慣れもありスムーズに進むので、あんまりトラブルとかはないのですが、たとえば「はるか高みに続く階段を上って」というセリフ、最初「のぼって」と読まれていたのを「あがって」に直してほしいとお願いするとか細かいところの修正があったので、やっぱり立ち会いは必要だなと思いますね。あと台本にないガヤのセリフとかもその場でチェックしていまして、たまに「貴族なので一人称『俺』は避けてほしい」とか、お願いしていました。
白浜 私も同じくリモートでの立ち会いが多かったですけど、ガヤのセリフはたしかに、その場で対応しなくちゃいけないので大変でした。市民たちのガヤと、魔法使いのガヤだとやっぱり話題が全然違うので変えてほしいと、細かいところのお願いをしていましたね。
香月 声優さんの演技についてはほとんど言うことがないのですが、一度だけ、エルヴィーラのフェルディナンドに対する思いがあふれすぎていたので、演じられている井上喜久子さんに「もうちょっと抑えてください」とお願いしたことはありました(笑)。あとフェルディナンド役の速水奨さんに、「もっとマインに厳しく、冷たく接してしてください」とお願いしたこともありますけど、印象に残っているのはそれくらいですね。
――ほかに、アニメ制作の過程で印象的だったことは?
白浜 音楽の収録に立ち会わせていただいたのは、面白い経験でしたね。興味本位で参加させていただいたんですけど、収録の前に演奏家の方がたくさんの笛を持ってこられて、「どの音色がメインテーマのイメージにぴったりか決めてほしい」とお願いされ、その場でいろいろ聴き比べたんです。
香月 それは面白いですね。私は音楽についてはほぼノータッチで、上がってきたものを聞かせていただくだけなので、音楽収録の現場は未知ですね。
白浜 私も音楽は専門外なので、知らない言語が飛び交う現場に立ち会えて面白かったですよ。アニメ化によって、こういった貴重な機会をいただけたことはすごくうれしく思います。
ココやローゼマインたちが邂逅したらどうなる!?
――今回のコラボビジュアルとして、ココとキーフリー、ローゼマインとフェルディナンドが一堂に会するイラストが登場します。おふたりはこの4人が出会って会話をしたら、どんなシチュエーションになると想像しますか?
香月 どうでしょうね? 4人とも根っ子が「魔法バカ」なのは共通しているから、気は合いそうですけど。
白浜 みんなそれぞれ秘密を抱えているから、最初はお互いを警戒し合う気がしますね。でもココとローゼマインは、すぐに意気投合して「これなんですか?」「教えてください!」みたいにふたりで盛り上がりそうです。
香月 ココはアニメになって、「魔法への憧れ」の強さがより強調された気がするんですよね。第1話でココがキーフリーに魔法にどうして憧れたのかを語るところが、すごく熱っぽくてかわいくて、印象に残っているんですよ。あれを見ていると、たしかに好奇心旺盛な感じでローゼマインにもいろいろ質問しそうです。
白浜 ココにとってアトリエでの勉強は大変ですけど、ローゼマインとしては、知らない本に囲まれているココの環境がうらやましいでしょうね。勉強で本を読んでいると眠くなると語っているココに、ローゼマインが「代わってほしい!」と言ってそうです。貴族になってからのローゼマインは、あんまりじっくり本を読む時間とかなさそうですし。
香月 一応原作だと図書室のカギをもらって本を読んでいるシーンもあるんですけど、アニメだと尺の都合で入れられなかったので、なかなか本を読めていない印象になりますよね。子どもたちはすぐ仲よくなれそうですけど、キーフリーとフェルディナンドは、お互い愛想笑いしかしなさそうです。
白浜 お互いの秘密を相手に握られてなるものかと、うわべだけの会話をするでしょうね。ココとローゼマインがキャッキャしながら、お互いの世界の魔法のこととかしゃべっちゃって、キーフリーとフェルディナンドがあたふたしてそうです。
香月 アニメでの印象として、キーフリーの意味深な雰囲気がはっきりしていたから、フェルディナンドとは打ち解けられないだろうと思うんですよね。明るくてまっすぐなココと対比されるような形で、「つばあり帽」に執着するキーフリーの陰の部分が際立っているような気がします。
白浜 アニメで描かれている範囲でのキーフリーは、原作でも一番彼がミステリアスに見えていた時期ですからね。この人は信用していいのか、本当にやさしい先生なのか、アニメだけご覧になっている方はまだまだわからないと思うのですが、じつは「秘密」というのは『とんがり帽子のアトリエ』のテーマのひとつになっています。この先の物語で、抱える秘密が明らかになりキーフリーの人となりが見えてきますので、気になる方は原作も読んでほしいです。
香月 キャラクターの印象がより強調されるのって、アニメがいわば「濃縮した面白さ」のあるものだからだと思うんですよね。それこそ『本好きの下剋上』も、原作をそのままアニメにしたらあまりにも長過ぎるから、いろいろ圧縮することになるわけです。その結果、原作とは違った面白さが生まれていると思います。『とんがり帽子のアトリエ』も、第1話でココとお母さんのやり取りが増えているとか、アニメで原作にないやり取りがたくさん見られて楽しかったです。
白浜 アニメは新しい読者さんの素敵な入口になる媒体ですよね。私も熱心な『本好きの下剋上』の原作ファンだと自負していますので、原作とアニメで違う楽しみ方をさせてもらっています。皆さんもぜひ、両方ご覧になっていただきキャラクターへの理解を深めて、「両方のキャラクターが絡んだら……」みたいな妄想話を楽しんでほしいです。
――最後に、両作品のファンの皆さんへメッセージをお願いします。
白浜 いまの時代って、ファンタジー作品を好きな人にとって天国だと思うんです。ぜひいろいろな作品を読んでさまざまなアイデアに触れてほしいですし、そのなかで『本好きの下剋上』や『とんがり帽子のアトリエ』にハマっていただけたら幸いです。私たちの作品が、皆さんの人生を豊かにする力になれていたらうれしいですね。
香月 『本好きの下剋上』と『とんがり帽子のアトリエ』は、世界観や魔法へのアプローチは異なるのですが、主人公の望みが家族、平穏、幸せなど共通していて、現実においても普遍的なものだと思います。ローゼマインやココが、自分の望むものに向かってまっすぐ進んでいく姿は、きっと皆さんに共感していただけるはず。これからもローゼマインとココを応援いただけるとうれしいです。
『とんがり帽子のアトリエ』の白浜鴎先生と、『本好きの下剋上』の香月美夜先生は、かねてよりお互いのファンだと公言し、SNSなどでも交流されています。
そんなふたりのリスペクトあふれる対談をお届けいたします。(収録時期:2026年5月中旬)
プライベートでも交流のあるふたり
――おふたりはSNS上でお互いの作品をお好きだと公言されています。まずは白浜先生と香月先生の、お互いの印象から教えてください。
香月 白浜先生と初めてお会いしたのは、たしかOVAのブックレットに掲載する対談をすることになり、お話する機会をいただいたときでしたね(※「本好きの下剋上 第五部 女神の化身Ⅰ」限定版に同梱されたOVAブックレット掲載の対談)。
白浜 そうです。あのときは私がSNSで『本好きの下剋上』が大好きだとつぶやいていたら、香月先生から反応をいただき、それがきっかけで対談させていただくことになったんです。
香月 私も白浜さんとお話したいと思ったから、こちらこそ対談できてうれしかったですよ。初めてお話したときは、「なんて言語化が上手な方なんだ」と思っていました。私がどう答えればいいかと黙り込んだときにパパっと言葉を出してもらい、助けてもらったこともあって。絵がとても上手なのはもちろん知っていましたけど、それだけでなく言葉選びが本当に上手な方だという印象でしたね。
白浜 小説家の先生にそういっていただけるのはうれしいです。でもあのときは、憧れの香月先生を前に私もけっこう緊張していたんですよ。香月先生はすごく精緻な世界観のお話を描かれる方ですから、お会いする前はいかにも「作家先生」みたいな堅いイメージを想像していたんですよね。実際にお話してみるとすごく親しみやすくて、「香月先生も私と同じ世界に暮らす人間だったんだ」と思ったのを覚えています。
香月 それはお互いさまですよ。私も白浜さんの描くマンガを最初に読んだときに、「とんでもない作家さんだ」と思っていましたから(笑)。
白浜 それから香月先生とはたまに、プライベートでも一緒にお食事とか行くようになりまして。最近お会いしたのは、3月に開催されたアニメの先行上映会でした(※2026年3月15日開催の『TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」世界最速!先行上映イベント』)。
香月 先行上映会のチケットがたまたま取れたから、前日に白浜さんへ「行くよ」って連絡したんです。そうしたら「ロビーに行くのでご挨拶させてください」って返事が来まして。私はうれしいけど、原作者さんが出てきちゃって大丈夫? と心配しました。
白浜 結局そのときは香月先生を関係者席のほうへお呼びして、ご挨拶させていただいたんです。バタバタしちゃいましたけど、アニメの方も楽しんでもらっていたようでうれしかったですね。
――昨年10月には、SNS上で香月先生が両作品のコラボショートストーリーを発表し、白浜先生が挿絵を描くという試みをされていましたね。あれはどのような経緯で、実施することになったのでしょうか?
香月 SNS上でのノリ? 白浜さんがフェルディナンドのネタをくれるなら対価として絵を描く?と言ったので、本当に短編を書いて対価をもらいますからね……みたいな流れです。じつは以前対談したときに何かコラボ的なことができないかと、ショートストーリーのネタを考えたんですけど、当時はまだ書籍が完結しておらず、書籍で追ってくださっている読者の皆さんにはネタバレになる時間軸のお話になったのでお蔵入りにしていたんです。ちょうどよかったので、そのネタを仕上げました。お互いの魔法の設定を壊さないように書くのが難しかったですけど、すごく楽しかったです。
白浜 私も楽しかったです! 以前にもお仕事でローゼマインちゃんを描かせていただくことは何度かありましたが、成長した彼女は描いたことがなかったので、いい経験をさせていただきました。あれは発表する前に香月先生とDMで何度かやり取りして、「違和感ないですか?」って監修いただいたんです。
香月 白浜先生もお忙しいのに、あんなお遊びに付き合っていただいて私も楽しかったです! ファンの皆さんにも喜んでいただいて、いいコラボになりましたね。
アニメならではの演出に感動!
――アニメ『とんがり帽子のアトリエ』と『本好きの下剋上 領主の養女』は、2026年春アニメとして同時期に放送されています。最初に知ったときは、どのように思いましたか?
香月 まさに奇跡ですよね。同時期に放送されたおかげでこうしてまた白浜さんと素敵なコラボの機会をいただいたので、うれしく思っています。
白浜 私も一緒に盛り上がることができてうれしく思っています。母がアニメ大好きで、『本好きの下剋上』もずっと見ているので、『とんがり帽子のアトリエ』と両方追いかけるのが大変だと言っていましたが(笑)。
香月 同時期に放送されているアニメはライバルみたいにとらえている方もいらっしゃると思うんですけど、私は原作者として一歩引いた立場からアニメを見させていただいているので、『とんがり帽子のアトリエ』も同時期にやっているのが素直にうれしいんですよね。
白浜 週の楽しみがたくさんあってうれしいって気持ちですよね。両方ともリアルタイムで追いかけています!
――(対談実施時点では)両作品ともまだ放送途中になりますが、ここまでお互いの作品のアニメをご覧になっての感想を教えてください。
白浜 『領主の養女』は貴族のキャラクターが多いので、これまでよりもキャラクターたちのお洋服とかが華やかになり、見ていて楽しいです。あとフェルディナンド様は相変わらず最高ですね! ローゼマインの妄想のなかでアイドルみたいにさせられちゃうとか、フェルディナンド様の面白い一面がたくさん見られてファンとしてはうれしいです。
香月 たしかにあんなフェルディナンドは原作では出てこないですから、楽しいですよね。
白浜 ローゼマインの決意とか、これまでアニメで積み重ねてきたものがしっかり表現されていて、それも素敵だと思いながら見ています。とくにED映像は、原作を最後まで読んだ私としてはあまりにもエモくてうるっとしてしまいました。本当に素敵なアニメだと思います。
香月 私はアニメ『とんがり帽子のアトリエ』の絵本みたいな表現が大好きです。白浜さんのイラストをそのまんまアニメに落とし込んだような演出がお見事で、「この数秒間のシーンにどれだけのこだわりが詰め込まれているんだろう」と、ただ驚くばかりでした。あれって「ハッチング」って言うんでしたっけ?
白浜 そうですね。アニメーターさんが私の画風を再現して描いてくださっているんですけど、私も見たときに驚きました。
香月 あと魔法陣とか描くときに動きが、ものすごくキレイなんですよね。ちょっとした準備の動きとかもごまかさずにすべて描かれていて。あの動きをアニメにするのは大変だと思いますので、アニメーターさんたちの努力に感心するばかりです。
白浜 わかります。アニメーターさんたちの技術は、本当にすごいですよね。
――アニメになったことで、より印象に残ったキャラクターやストーリーは?
香月 私はアガットが、マンガで読んでいたよりも刺さるキャラクターになりました。アニメで声や動きがついたことで、彼女の不器用なまじめさがより引き立った気がします。ちなみにうちの旦那は、リチェがお気に入りだそうです。一緒にアニメ見ながら「リチェかわいい」っていつも言っています(笑)。
白浜 私は第一章で、ローゼマインが家族の作った髪飾りを見て泣いてしまったシーンがすごく印象に残っているんです。中身は子どもじゃないのはわかっているのに、あのシーンはちゃんと年相応の「マインちゃん」に戻っていたのがとても素敵でした。演じられている井口裕香さんの演技もすばらしくて、忘れられないシーンになりましたね。あとローゼマインが神殿長になったことで、神殿のディティールが描かれるようになったのは、ファンとしてうれしいポイントです。これまで小説を読みながら想像で補っていたところがビジュアル化されたおかげで「祭壇ってこうなっていたんだ」とかうれしい発見がありますね。
香月 たしかにローゼマインが神殿長になってから、神事とかをちゃんと描くようになったので、私もアニメ化を楽しみにしていた部分でしたね。
白浜 香月先生の書く祝詞の文章がすごくかっこいいので、あれを読んでいるところを聞けるのもうれしいです。
香月 ありがとうございます。ちなみにあの祝詞、「神様の名前で噛みやすい」と声優さんたちから評判です(笑)。
原作者としてのアニメへの関わり方
――次はおふたりが、アニメ制作へどのように関わったのかお聞きしていきます。原作者のアニメ制作への関わり方は人それぞれだと思いますが、おふたりはいかがでしたか?
白浜 私は準備段階から、アニメ会社さんと密に連絡を取らせていただきました。お話とかは監督や脚本家の方にお任せしていましたけど、ビジュアル面については私自身が確認しなければならないことが多くて。とくに魔法陣についての監修の依頼が多かったですね。「こういう効果の魔法陣を描きたいのですが、これで合っていますか?」というスタッフさんの質問に、「この魔法陣だとダメなのでこれを足してください」みたいな指示を出すのは、まるで魔法学校の先生になったような気分でした(笑)。
香月 たしかに普通の日常では絶対にしない会話ですね。でも白浜さんは、ビジュアル面についてはこだわり強くて細かくチェックされている印象がありますよ。
白浜 本当にじっくりと見させていただいたのは最初だけでしたね。スタッフさんの上げてくださるものがいずれもすばらしかったので、制作の後半は確認のご依頼をいただいてもほとんどそのまま戻していました。
香月 白浜さんは絵を描けるから、ビジュアルの質問をされたときにも明確なイメージを返すことができるじゃないですか。それがすごくうらやましいですよ。私はアニメの初めからずっと制作過程のほとんどを自分で見ているんですけど、メインじゃないキャラクターの外見やちょっとしたプロップとかの説明を求められたとき、スタッフさんへイメージを共有するのが難しくて。「私が絵を描けたら説明が早いのに」と思うことはいっぱいあります。
白浜 香月先生は、シナリオとかもすべて監修されているんですか?
香月 そうですね。アニメだと尺の都合で、原作からエピソードを削らざるを得ないこともあるのですが、エピソードを削った結果後々に影響が出ることもありますので、確認をしなければなりません。シナリオだけでなく絵コンテのチェックも大事で、とくにコミカライズとかでビジュアル化されていない部分のキャラクターの動きとかは、一度イメージと違うものが世に出てしまうとその後の修正がきかなくなります。だから絵コンテのチェックは、毎回すごく緊張していますね。あとこの作品は背景にちょっと写っているキャラクターがじつは後々の重要人物、みたいな見せ方もしているので、初めて登場するキャラクターの作画とかも見せていただいているんです。
白浜 なるほど。『本好きの下剋上』のアニメはすごく原作の解像度が高いと思っていたんですけど、香月先生がそこまで細かく見ていらっしゃるからだったんですね。
香月 もちろんすべて原作どおりにならず、削ってしまったシーンの整合性を取るため、アニメオリジナルの描写を入れることもあります。そういうのは仕方ないですし、基本的には「楽しいアニメになればいいな」と思いながら監修していますね。あの話をちゃんとアニメの尺に収められるよう、苦心してくださっているスタッフさんはすごいと思いますよ。
――アフレコ現場をご覧になっていて、印象的だったことは?
香月 アフレコの立ち会いは、最近はリモートが多いですけど一応全話参加しています。最近はキャストさんたちの慣れもありスムーズに進むので、あんまりトラブルとかはないのですが、たとえば「はるか高みに続く階段を上って」というセリフ、最初「のぼって」と読まれていたのを「あがって」に直してほしいとお願いするとか細かいところの修正があったので、やっぱり立ち会いは必要だなと思いますね。あと台本にないガヤのセリフとかもその場でチェックしていまして、たまに「貴族なので一人称『俺』は避けてほしい」とか、お願いしていました。
白浜 私も同じくリモートでの立ち会いが多かったですけど、ガヤのセリフはたしかに、その場で対応しなくちゃいけないので大変でした。市民たちのガヤと、魔法使いのガヤだとやっぱり話題が全然違うので変えてほしいと、細かいところのお願いをしていましたね。
香月 声優さんの演技についてはほとんど言うことがないのですが、一度だけ、エルヴィーラのフェルディナンドに対する思いがあふれすぎていたので、演じられている井上喜久子さんに「もうちょっと抑えてください」とお願いしたことはありました(笑)。あとフェルディナンド役の速水奨さんに、「もっとマインに厳しく、冷たく接してしてください」とお願いしたこともありますけど、印象に残っているのはそれくらいですね。
――ほかに、アニメ制作の過程で印象的だったことは?
白浜 音楽の収録に立ち会わせていただいたのは、面白い経験でしたね。興味本位で参加させていただいたんですけど、収録の前に演奏家の方がたくさんの笛を持ってこられて、「どの音色がメインテーマのイメージにぴったりか決めてほしい」とお願いされ、その場でいろいろ聴き比べたんです。
香月 それは面白いですね。私は音楽についてはほぼノータッチで、上がってきたものを聞かせていただくだけなので、音楽収録の現場は未知ですね。
白浜 私も音楽は専門外なので、知らない言語が飛び交う現場に立ち会えて面白かったですよ。アニメ化によって、こういった貴重な機会をいただけたことはすごくうれしく思います。
ココやローゼマインたちが邂逅したらどうなる!?
――今回のコラボビジュアルとして、ココとキーフリー、ローゼマインとフェルディナンドが一堂に会するイラストが登場します。おふたりはこの4人が出会って会話をしたら、どんなシチュエーションになると想像しますか?
香月 どうでしょうね? 4人とも根っ子が「魔法バカ」なのは共通しているから、気は合いそうですけど。
白浜 みんなそれぞれ秘密を抱えているから、最初はお互いを警戒し合う気がしますね。でもココとローゼマインは、すぐに意気投合して「これなんですか?」「教えてください!」みたいにふたりで盛り上がりそうです。
香月 ココはアニメになって、「魔法への憧れ」の強さがより強調された気がするんですよね。第1話でココがキーフリーに魔法にどうして憧れたのかを語るところが、すごく熱っぽくてかわいくて、印象に残っているんですよ。あれを見ていると、たしかに好奇心旺盛な感じでローゼマインにもいろいろ質問しそうです。
白浜 ココにとってアトリエでの勉強は大変ですけど、ローゼマインとしては、知らない本に囲まれているココの環境がうらやましいでしょうね。勉強で本を読んでいると眠くなると語っているココに、ローゼマインが「代わってほしい!」と言ってそうです。貴族になってからのローゼマインは、あんまりじっくり本を読む時間とかなさそうですし。
香月 一応原作だと図書室のカギをもらって本を読んでいるシーンもあるんですけど、アニメだと尺の都合で入れられなかったので、なかなか本を読めていない印象になりますよね。子どもたちはすぐ仲よくなれそうですけど、キーフリーとフェルディナンドは、お互い愛想笑いしかしなさそうです。
白浜 お互いの秘密を相手に握られてなるものかと、うわべだけの会話をするでしょうね。ココとローゼマインがキャッキャしながら、お互いの世界の魔法のこととかしゃべっちゃって、キーフリーとフェルディナンドがあたふたしてそうです。
香月 アニメでの印象として、キーフリーの意味深な雰囲気がはっきりしていたから、フェルディナンドとは打ち解けられないだろうと思うんですよね。明るくてまっすぐなココと対比されるような形で、「つばあり帽」に執着するキーフリーの陰の部分が際立っているような気がします。
白浜 アニメで描かれている範囲でのキーフリーは、原作でも一番彼がミステリアスに見えていた時期ですからね。この人は信用していいのか、本当にやさしい先生なのか、アニメだけご覧になっている方はまだまだわからないと思うのですが、じつは「秘密」というのは『とんがり帽子のアトリエ』のテーマのひとつになっています。この先の物語で、抱える秘密が明らかになりキーフリーの人となりが見えてきますので、気になる方は原作も読んでほしいです。
香月 キャラクターの印象がより強調されるのって、アニメがいわば「濃縮した面白さ」のあるものだからだと思うんですよね。それこそ『本好きの下剋上』も、原作をそのままアニメにしたらあまりにも長過ぎるから、いろいろ圧縮することになるわけです。その結果、原作とは違った面白さが生まれていると思います。『とんがり帽子のアトリエ』も、第1話でココとお母さんのやり取りが増えているとか、アニメで原作にないやり取りがたくさん見られて楽しかったです。
白浜 アニメは新しい読者さんの素敵な入口になる媒体ですよね。私も熱心な『本好きの下剋上』の原作ファンだと自負していますので、原作とアニメで違う楽しみ方をさせてもらっています。皆さんもぜひ、両方ご覧になっていただきキャラクターへの理解を深めて、「両方のキャラクターが絡んだら……」みたいな妄想話を楽しんでほしいです。
――最後に、両作品のファンの皆さんへメッセージをお願いします。
白浜 いまの時代って、ファンタジー作品を好きな人にとって天国だと思うんです。ぜひいろいろな作品を読んでさまざまなアイデアに触れてほしいですし、そのなかで『本好きの下剋上』や『とんがり帽子のアトリエ』にハマっていただけたら幸いです。私たちの作品が、皆さんの人生を豊かにする力になれていたらうれしいですね。
香月 『本好きの下剋上』と『とんがり帽子のアトリエ』は、世界観や魔法へのアプローチは異なるのですが、主人公の望みが家族、平穏、幸せなど共通していて、現実においても普遍的なものだと思います。ローゼマインやココが、自分の望むものに向かってまっすぐ進んでいく姿は、きっと皆さんに共感していただけるはず。これからもローゼマインとココを応援いただけるとうれしいです。








